上腕骨外側上顆炎(テニス肘)とは
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)は30~50歳代に多く発症し、肘の外側に痛みを自覚します。スポーツではテニス愛好家に多く見られることからテニス肘と呼ばれる事もありますが、実際はテニスをしない方にも比較的よくみられる病気です。フライパンを握る家事動作や、最近ではパソコンをしていて痛みが出だす方もいます。上腕骨外側上顆炎の障害部位は短橈側手根伸筋(たんとうそくしゅこんしんきん)の起始部であり、疼痛の原因は腱付着部の炎症ではなく、加齢に伴う腱の質の低下(変性)
や微小断裂であることが分かってきました 。
治療法としては保存療法(薬物療法、理学療法、装具療法、注射療法など)や手術療法があります。保存療法で現在もっとも推奨される治療法は理学療法となります。軽症例であれば、保存療法(安静、ストレッチなど)により数か月で良くなることが多いです。ただ、原因が炎症ではなく変性であることと、腱は血流の乏しい組織で自己治癒が難しいことなどから難治性となる場合もあります。一般的には、半年以上保存療法をしても改善が見られない場合は、そのまま自然軽快は難しいことも多く手術が行われることもあります。さて、上腕骨外側上顆炎の治療として、ステロイド局所注射が行われる事があります。疼痛を和らげる手段として短期的には有効であることは示されておりますが、長期的な有効性はなく、1年後の再発率は約50%程度との報告もあります。また、ステロイド局所注射の副作用として注射部位の皮膚脱色や萎縮の発生頻度が5%前後あり、注射を繰り返すと組織や靱帯を脆弱にすることも知られています。実際に複数回(2~4回程度)のステロイド局所注射により肘関節外側側副靱帯が断裂した報告例もあります。一般的には、ステロイド局所注射は疼痛が強く、仕事や日常生活動作の支障が著しい急性期において、患者様の同意のもと1~2回に限り行うことが勧められております。基本的には、ステロイド局所注射をすることで組織が修復する事はありませんので、上記のリスクなどを担当医とよく相談されてから行うことをお勧めいたします。